理事長挨拶

金井 隆典

2020年9月1日付で、日本消化器免疫学会の第4代理事長に選任されました。重責ではありますが、今、とてもやり甲斐を感じております。これまで本学会に多大な貢献をされました、恩師である故土屋雅春初代理事長、日比紀文第2代理事長、渡辺守第3代理事長の足跡をさらに発展できればと改めて身の引き締まる思いです。皆様のご支援を心よりお願い申し上げます。

日本消化器免疫学会は、1978年に慶應義塾大学医学部内科学(消化器)の故土屋雅春先生らが中心となって、「消化器と免疫研究会」として発足しました。当時未開の分野であった消化器領域における免疫学を臨床医だけでなく、たくさんの著名な免疫学者の先生も参加くださり、年2回、東京、旧経団連ビルの会場で1日半かけ熱い発表と議論が繰り広げられていました。私も大学院時代から参加し、緊張しながらも、本学会の前身でもある「消化器と免疫研究会」に鍛えられたことを今でも鮮明に覚えています。特に、免疫学の先生の教室からの最新の分子生物学の手法を用いた研究は、臨床医の研究者に衝撃的なインパクトを与えただけではなく、臨床医も分子生物学の技術を習得し、研究内容も随分と洗練されていきました。このことは極めて重要なことで、「消化器と免疫研究会」会員の研究者は、他の臨床医学領域に比べても早期から最新の研究手法を「消化器と免疫研究会」会員の免疫学者との交流を通じて取得することができました。改めて、創始者である故土屋雅春先生の卓越した、未来を予測する洞察力に敬意を感じざるをえません。1996年には「消化器と免疫研究会」は「日本消化器免疫学会」と学会に衣替えを行い、2020年までに通算57回開催されてきました歴史ある学術集団です。

1997年に、日比紀文先生が第2代理事長に、2014年に渡辺守先生が第3代理事長に就任され、学会は若い研究者も加わり、益々発展してきております。特筆するべきことは、本学会が歩んできた過去40年間、消化器免疫疾患領域におけるたくさんの免疫学の発見の成果によって、様々な臨床応用が現実のものとなり、現在の消化器免疫学領域は、今まさに、エキサイティングな分野となっていることです。また、消化器という臓器が全身に影響し、臓器を超えた学問領域と進化していることもあり、消化器免疫学の重要性がさらに明らかになってきています。

本学会の素晴らしさは、消化器免疫学という学際領域の課題に対して、基礎医学者と臨床医が一緒になって活発な議論を行うことです。また、消化管、口腔、肝臓、胆膵、腫瘍、感染と臓器を超えて、消化器免疫学を発展させることが設立当初から貫かれています。学会を終えると、参加者の多くがたくさんのことを学び、刺激され、次なる挑戦へのヒントを得ることが可能な学会と信じています。現在、会員数は微増を続けておりますが、約360名と比較的小規模な学会です。しかし、これには大きな意味があると思っております。本当に消化器免疫学が好きで、いつもワクワクするからと会員になられている方々ばかりだからです。多くの若手研究者が次々と参加してくださり、本学会の伝統のバトンを将来に引き継いでくれることを願ってやみません。最後に改めて、本学会がさらに発展するために、全身全霊で取り組む所存であります。会員皆様のあたたかいご支援をよろしくお願い申し上げます。

日本消化器免疫学会
理事長 金井 隆典
慶應義塾大学医学部教授